しーまさんちの猫ブログ運営者の CMATERRACE SIBERIANS™(サイベリアンブリーダー・キャットグルーマー・動物看護師)です。
私自身の詳細は、プロフィールページに記載してありますので、以下の詳細ページよりご確認下さい。
猫種特有の大きな疾患(遺伝性疾患を含む)が確認されていない健康優良猫種がサイベリアンの魅力の一つです。
しかし、病気に罹患しない確率は生き物である以上0%というのはあり得ません。
今回は、低確率ながらも現在サイベリアンが確認されている大きな疾患のワースト3と治療法についてお話ししていきます。
連載第1回目は、ワースト1位である「ピルビン酸キナーゼ欠乏症」のお話しになります。
ワースト3は以下の疾患となります。
- 1位 ピルビン酸キナーゼ欠乏(欠損)症(代表猫種はシンガプーラやベンガル・アビシニアンなど)
- 2位 子宮蓄膿症(女の子のみ)
- 3位 肥大型心筋症(大型種に多い)
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の概要
赤血球上にあるピルビン酸キナーゼと呼ばれる酵素が欠損することにより、十分なエネルギーを産出することが不能となり、貧血に陥ってしまう病気です。
診断は、血液検査を通じた貧血指数の確認や遺伝子検査を通じた遺伝子病検査の確認等で診断を下します。
貧血を根本的に改善するには骨髄移植が必要となりますので、非現実的です。
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の病態
ピルビン酸キナーゼ欠乏症は、「PKLR遺伝子」という特異的な変異遺伝子を両親から1本ずつ受け取った時に発症する常染色体劣性遺伝です。
しかし、1本だけ受け継いだ「キャリア」の猫ちゃんにおいても、ピルビン酸キナーゼ酵素活性が50%程度しかないと推測されていますので、健康という区分ではなく「欠乏」という区分になる場合があります。
症状は軽度・中等度・重度、若年性、成猫等、発症や程度は個体差により様々で、予測することは出来ず原因不明の突発性難治性疾患です。
環境やストレスが発症パターンに影響を及ぼしているのではないかとされていますが、推測の域を超えていません。
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の背景
ピルビン酸キナーゼ欠損症の原因は遺伝です。
病気を発症したアビシニアンとソマリの採取したDNAを基に研究をしたところPKLR遺伝子のエクソン5と呼ばれる領域に特異的な変異があることが確認されました。
人間においてはこのPKLRの変異が190種類確認されていますが、猫ちゃんにおいてはエクソン5の1種類だけです。
この病気は、1992年アメリカのアビシニアンで最初に確認され、この疾患遺伝子が猫種内に広まったと考えられ、アビシニアン以外にも疾患遺伝子を調査するために、アメリカとイギリスの38猫種を対象に調査し、元データーが作成されました。
保有率第1位はシンガプーラ 次いでベンガル
その中でアビシニアンが14.9%・同じカテゴリーのソマリが12%で、保有率が一番多い猫種はシンガプーラの32.7%次いでベンガルの17.2%でした。
サイベリアンの保有率は2.4% 発症率はほぼ0%
ちなみにサイベリアンは全疾患では2.4%で、100匹中2~3匹の保有率(遺伝率)ですから、遺伝発症率を考えると0%に近い数字ということになります。
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の症状
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の症状として以下のような症状が確認されています。
複数該当する場合は要注意です。
- すぐに疲れる
- 運動したがらない
- 口腔粘膜の蒼白化
- 脈が速い
- 心臓の収縮期雑音
- 脾腫・肝腫
- 黄疸
- 綱状赤血球の増加
- 高グロブリン血症
- 高ビリルビン血症
上記の内、ご自宅内で猫ちゃんの健康チェックが出来るのは、①②③④⑦です。
これら症状は別の疾患の兆候でも確認できますので、通常の状態よりも違う状態の時には早急に動物病院に通院するようにしましょう。
勿論個体差がありますので、もともと運動したがらない猫ちゃんやもともと持久力のない(体力がない)猫ちゃんもいますので、あくまでも通常の状態よりも違う時には通院するようにしましょう。
また、サイベリアンは成猫期になると動くことを好まない猫種的特徴があります。
その場合は動きに着目して下さい。
動くことが「億劫」なのと動きが「しんどい」とは別問題です。
動物病院の選定
これはどの動物病院に言えることですが、殆どの動物病院は「タイプ別(例えばロング&サブスタンシャル=大型種)という中カテゴリー」や「猫種別(例えばサイベリアン)という小カテゴリー」で診断するというよりかは「犬や猫とそれ以外(エキゾチックアニマル)という大カテゴリー」で診断する傾向にあります。
エキゾチックアニマルは難しいから犬猫専門病院と謳っている動物病院も増えています。
そんな動物病院で診察した結果PKDと判断するかどうかは、その動物病院の「質」によります。
PKDの検査項目は、遺伝子病検査の専用項目検査をしない限りは、内蔵系疾患の検査項目にも類似しますので、誤診される可能性は十分に考えられます。
そのため「PKDはサイベリアンにも当てはまる」という知識があるなど、「猫種別のカテゴリーに強い」動物病院を選定するようにしましょう。
獣医の「質」を変えていけるのは、オーナー様だけ
難しいうようであれば、遺伝子病の事だけに留まらず、動物病院の獣医に血統猫の特性を伝え、特性に応じた検査や治療方針を定めてもらえるように、徐々に獣医の「質」をオーナー様が変えていく必要があります。
家族である猫ちゃんの健康を守る上でとても重要なオーナー様の役割です。
是非獣医に従うだけではなく、サイベリアンのことを獣医に知ってもらう努力をしていきましょう。
ピルビン酸キナーゼ欠乏症の治療
重症例
残念ながら、重症(アフェクテドの両親から変異遺伝子1本ずつ継承)では、骨髄移植しか改善は見込めません。
治療法としては対症療法がメインとなり、とりあえず「インターフェロン」等の抗生物質の投与と経過観察だけです。
重症例では環境やストレスが症状悪化に関係している可能性があることから、環境やストレスを与えない、例えば猫と言う本来備わっている動物自体の特性や猫種別特性を生かした生活環境の改変が必要となります。
軽症例
軽症(キャリアの両親から変異遺伝子1本のみ継承)の場合は、激しい運動を避けるだけで日常生活を問題なく保つことが出来るでしょう。
サイベリアンは成猫の場合、もともと動かない猫種的特徴があります。
その点においてはラッキーな猫種です。
軽症・重症問わずストレスのない又は軽減された環境というのは、健康増進・病気予防の観点からすべてにおいて基礎と言えるのは確かです。
常日頃からホリスティックの視点を持ちましょう
現代の西洋医学が主流ですが、東洋医学であるホリステック・ケア(自然治癒力を高めることを目指す自然医学)の視点も健康増進・病気予防の一つです。
治療だけに着目せずに、現在の「生活環境が猫ちゃんに適しているか」を適宜見直されてみては如何でしょうか。
愛情は可愛がるだけではありません。
言い方を変えますと可愛がるとはこの視点も含まれることを忘れないようにお願いします。
最後に
このピルビン酸キナーゼ欠乏症は、重症例では致命的な大きな疾患ですが、殆どのケースでは無症状に近く、年に1回の健康診断でさえ、この病気にターゲットを絞った検査をしない限りは動物病院でも誤診や最悪気づかれない、違う意味で厄介な病気です。
ただ、この疾患に陥った場合でも軽症例では、激しい運動を避ければ日常生活に全く支障ないことが殆どのようです。
当方から迎い入れた仔猫ちゃんの両親は、念のためこのピルビン酸キナーゼ欠乏症の遺伝子病検査を済ませており、クリア(変異遺伝子を1本も継承していない)同士でのみ交配しておりますので、理論上ではありますが、この変異遺伝子は遺伝しないとされています。
但し、これは0%であはるもの小数点以下の極稀に遺伝する可能性はあります。
これは「動物と過ごすことへ様々なリスクと同様」ですので、それほどシビアに考える必要性は低いでしょう。
これからも飼育に関する内容や病気予防に関する内容をお伝えさせて頂きますので、日々の飼育の参考になればとてもうれしく思います。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。