しーまさんちの猫ブログ運営者の CMATERRACE SIBERIANS™(サイベリアンブリーダー・キャットグルーマー・動物看護師)です。
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猫種特有の大きな疾患(遺伝性疾患を含む)が確認されていない健康優良猫種がサイベリアンの魅力の一つです。
しかし、病気に罹患しない確率は生き物である以上0%というのはあり得ません。
今回は、低確率ながらも現在サイベリアンが確認されている大きな疾患のワースト3と治療法についてお話ししていきます。
連載第2回目は、ワースト2位である「子宮蓄膿症」のお話しになります。
ワースト3は以下の疾患となります。
- 1位 ピルビン酸キナーゼ欠乏(欠損)症(代表猫種はシンガプーラやベンガル・アビシニアンなど)
- 2位 子宮蓄膿症(女の子のみ)
- 3位 肥大型心筋症(大型種に多い)
疾患の概要
「子宮蓄膿症」は、子宮の内部で菌が増殖し、膿が子宮内に溜まる女の子特有の疾患で、膿が子宮内に溜まり過ぎて子宮が破裂すると、短時間で落命する緊急性がかなり高い疾患です。
子宮蓄膿症は、わんちゃんでは一般的な疾患ですが、猫ちゃんはわんちゃんほど多く見られません。
これは、子宮蓄膿症の発症には「黄体ホルモン」というホルモン分泌が関係しており、わんちゃんと猫ちゃんとでは発情や排卵の周期が違うからです。
猫ちゃんは「交尾後排卵動物」
猫ちゃんは「交尾後排卵動物」です。
交尾後排卵動物とは、わんちゃんのように周期で発情し排卵をするのではなく、発情後の交尾後に排卵し黄体期が見られる動物のことを言います。
猫ちゃんは、周期で排卵するわんちゃんと異なり、排卵回数が圧倒的に少なく黄体ホルモンが分泌される期間が短く、黄体ホルモンが関係する子宮蓄膿症の発症が圧倒的に少ないと言われている理由はこのためです。
但し、最近では交尾後ではなくても自然に排卵する猫ちゃんも確認されているため、その排卵後の黄体期に子宮蓄膿症が発症しているというケースも増え始めているようです。
子宮蓄膿症の原因
黄体期になると、「黄体ホルモン」の影響によって、精子を受け入れやすくし妊娠に備えるべく、子宮内膜が分厚くなり、子宮の頚部が緩み、免疫機能が低下します。
この時になんらかの細菌が子宮内に侵入しやすくしてしまいます。
細菌の侵入を許してしまった子宮は、防御反応として内膜に炎症を起こし(子宮内膜炎)を発症します。この子宮内膜炎が慢性化し、子宮内に膿が溜まってしまった状態のことを子宮蓄膿症と言います。
大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌などの細菌が子宮内で増殖し、子宮蓄膿症を引き起こすと言われています。
子宮蓄膿症の症状
子宮蓄膿症になった猫ちゃんは、症状が進行するまではっきりとした症状がないことが多い厄介な疾患です。
症状が進行するにつれ、子宮に膿が溜まりお腹が膨らみ、熱っぽく元気がなくなり、嘔吐・下痢といった症状が現れてきます。
多飲(前兆)、頻尿(前兆)、陰部からの膿流出(重症)、腹部膨満(重症)、嘔吐・下痢(重症)、発熱(重症)等の症状がある場合は、子宮蓄膿症に罹患している可能性を疑う必要がありそうです。
特にサイベリアンは、バレルボディ(樽状の腹部)が特徴的な猫種であるため、腹部膨満は見落としがちです。
その他の症状と照し合せながら観察をするようにしましょう。
子宮蓄膿症は、子宮頸管の開閉状態で、「開放型」と「閉鎖型」に分類されます。
開放型
「開放型」は、子宮頸管が開いている状態で、開いている子宮頸管を通じて外陰部から大量に膿が漏れ出ます。
猫ちゃんの陰部が臭う、汚れている等の異変に気づくことが容易なため、比較的早期に通院することが出来るでしょう。
閉鎖型
一方「閉鎖型」は、子宮頸管が閉じている状態で、膿が溜まってくることでお腹が膨らみ、触ると痛がるなどの症状が現れます。
膿が体外に出ていかないため、溜まった大量の膿で子宮破裂を引き起こし、腹腔内に膿が漏れると、「ショック症状」「急性腎不全」「多臓器不全」「腹膜炎」「敗血症」等を引き起こし、短時間で落命するリスクが非常に高い型となります。
子宮蓄膿症に罹患しやすい年齢
猫ちゃんの場合は、わんちゃんに比べて若くして発症するケースもあり、1歳程度で発症することも稀ではありません。
そのために、避妊手術をしていない全ての女の子は子宮蓄膿症になる可能性があると思っていた方が現実的と考えます。
5歳以上の中年期の猫ちゃんではハイリスクになります。
子宮蓄膿症の治療法
治療法は、外科的手術が一般的
治療法は、卵巣と脳が溜まった子宮を摘出する外科的手術が一般的です。
子宮蓄膿症は、症状の進行がとても早い疾患であるため出来るだけ早期に外科的手術を施すか否かで命が助かる確率が変化するようです。
症状の進行具合いによっては入院で点滴等を行い、状態が安定してから手術を施す場合もあります。
細菌感染を引き起こしている状態で麻酔や手術を施すため、一般的な避妊手術よりもハイリスクとなり、術中に落命する場合もあるようですのでインフォームドコンセントを受けた上で同意するようにしましょう。
痰飲後は、完治を目指せる
術後は入院加療が必要とるようです。
但し、手術後退院し、完全に回復すれば、完治を目指せる疾患です。
高齢や他の疾患に罹患していて麻酔がかけられない場合は、薬剤を注射して子宮の収縮作用を高め、膿を排泄させたり、抗菌薬の投与などの内科的治療を行う場合もあるようです。
子宮蓄膿症の予防法
予防法は、ホルモン分泌が関係する疾患であるため、避妊手術以外に有効な手段はありません。
避妊手術をすると性ホルモンの分泌や発情をしなくなるため、子宮蓄膿症を予防できます。
定期的に出産をすると子宮蓄膿症になる確率は低くなりますが、一般の飼い主様に限っては出産をさせることはないと思いますので心配ないと考えられます。
また、避妊手術を行うことで子宮蓄膿症だけでなく乳腺腫瘍も予防できます。
当方では、譲渡後に避妊去勢することを条件に販売しているため「繁殖する・しない・血統書いる・いらない」に関わらず、8か月頃、遅くとも1歳前までには避妊手術を施した上で、当方まで報告をお願いします。
これからも飼育に関する内容や病気予防に関する内容をお伝えさせて頂きますので、日々の飼育の参考になればとてもうれしく思います。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。